その日、九郎は落ち着きなく辺りを窺っていた。かと思えば、時折考え込むように立ち止まる。その横を通り過ぎたなら「だが俺には・・・」「しかし・・・」と呟く九郎の声が聞こえただろう。
「九郎殿は何か悩みでもあるのでしょうか」
その横を通り過ぎてしまった敦盛が将臣に問う。将臣は言われて、九郎の不審な所作に目をとめた。九郎は部屋の四隅をぐるぐると回っている。
「なんだ、ありゃ」
敦盛と将臣が近づいてもその動きを止める気配はない。
「九郎、何やってんだ?」
自分の思考に呑み込まれていた九郎が我に返った。将臣を認識して、心なしか安堵した顔になる。
「将臣か。実はだな、敦も・・・・・・りっ!?」
将臣の隣に並ぶ敦盛に気づいた九郎は、大仰に驚いた。目を瞠ったまま微動だにしなくなった九郎の目の前で、将臣がひらひらと手を振る。
「おーい?」 「・・・・・・敦盛」
唐突に九郎に呼びかけられ、敦盛の肩が動く。
「・・・先生を見かけなかったか?」
今までの行動と質問の関連性が全くつかめない将臣が目を瞠った。
「いえ、今日はまだ」 「そうか。・・・・・・時にお前に尋ねたい。先生とご一緒なのを見かけるが、先生のことをどう思っているんだ」
さらに関連性のない質問に敦盛が戸惑う。けれども敦盛は考え込んでいる。やがて言葉を選びつつ答えた。
「尊敬できる方だと」 「そうだな。俺もそう思う」
深く頷く九郎の真意が敦盛には全くわからない。九郎が話を続けるのを待った。
「・・・お前は先生のことを慕っているという。それは俺も同じだ。だ、だから」
言いよどみ、視線があちらこちらに飛び交う。その後息を吐いて、意を決したように敦盛の視線を捉える。
「おめでとう、敦盛」 「九郎殿?」
何でここで祝われるのかもわからない。謎を残したまま九郎は「話はそれだけだ」と立ち去った。
横で二人のやり取りを見ていた将臣がポツリと呟いた。
「あいつ、回りくどすぎ」九郎さんはこんなイメージ。まだるこしい人という。仲直りとかも、本当はしたいのに、なかなか出来ないような。こちらも投稿させていただいたもの。これは何の変更もないです。敦さんと九郎さんの絡みってないですよね。会話させづらい。
20060513 次もあるんだけどね・・・