Silent voice

先輩が先輩らしくいられるように。 俺が、俺に出来ること。 「えっと・・・こうでもないし、あれ?もう一回!」 庭から、弱音とも、気合とも取れる掛け声が俺の耳まで響く。 桜が咲き誇り、風が吹けば花びらがはらりはらりと舞い落ちて。 木の真下には、同じ桜色をした見覚えのある人物が剣を振りながら
そう呟く。 とある屋敷の庭の風景とは到底似つかわしくないこの状況も今の自
分達には必要なことだった。 花断ち。先輩が習得することで、これからさきの道が開ける。 「うーん・・・どうも上手くいかないんだよねぇ・・・。」 はっきり言って無謀な話だ。これまで剣なんて扱ったことの無い先
輩が、いきなり舞い落ちる桜の花びらを斬るなんて。 難易度は半端なく、きっと修行をしたことのある人でさえ難しいの
だろうということが容易にわかる。 「どうしたら・・・いいんだろう・・・・・?」 それでも、先輩はやると決めた。 半ば喧嘩を買ったような会話だったけれど、先輩の意思は固い。 きっと、成功するまで努力はやめないのだろう。 こんなとき、俺が剣が扱えればよかったと思う。 一緒に悩んで、答えを見つける手がかりを探りだせるかもしれない
と。 俺の武器は弓。しかも初心者ではない。 覚えなければならない技も無い。 先輩とは状況がまるで違うのだから、俺が下手に口を出すものでも
ないのだろう。 ・・・・・たとえ、俺が剣使いであったとしても相談することは無
いのだろうけれど。 先輩は、独り言が台所まで聞こえているなんて気づいてはいない。 今「順調ですか?」と問えば間違いなくはいと答える。 間違いないだろう。 決して、人前では弱音を吐かない先輩だから。 励ますという行為は、きっと先輩を傷つけるだけだから 俺は中庭へと脚を運ぶ。 先輩は俺に気づくことなく、樹に向かって。 聞き取れないが、まだなにかぶつぶつと呟きながら剣と花びらを
交互に見て考え込む先輩に俺はそんなことはお構いなしに声を
かける。 「先輩、ちょっと休憩にしませんか?蜂蜜プリンを作ったんです。」 「ほんと!?今行く!」 先輩はすぐにこちらを振り向く。 笑顔に桜の花びらが、とてもよく似合っていた。 今俺に出来ること。 少しでも、先輩の負担を減らすこと。 先輩が、先輩らしくいられるように。 「うん。おいしい!さっすが譲君!!」 「練習、無茶はしないでくださいね?」 「・・・・了解!ありがと。」 END -------------------------------------------------------- お久しぶりな譲→神子。いつに無く短いですが・・・・リクエスト
作品です(すみません) 時期は花断ち・・・第2章ですかね。 一週目で花断ち未修得ということで・・・かれこれもう一年前にや
ったとこなんで設定微妙ですが・・・(すみません) 料理で励ますゆずるんがコンセプト。


ウミノカナタの砂都様より、キリ番でリクエストして頂きました。 タイトル、砂都様のサイトのように格好良くできませんでした。 もらっちゃいました〜。ありがとうございます〜。嬉しくて口が緩
んでます。この譲くんを嫁にほしいです〜。 本当にこの神子は幸せ者だな〜と、その譲くんの想いに応えてやってくれよ〜と思って読んでます。 本当にありがとうございました!