7.我慢してたんだよ?

「我慢してたんだよ?」
ヒノエはそう言って望美の髪を一房、掬い上げて口付けた。 望美は振り向けずに硬直してしまった。 ヒノエはくすりと笑った。
「でも、もうそんな必要はないからね。こうやって望美に 思う存分、触れられる」
石のように固まって動けない望美の両肩をつかんで、 身体を反転させた。振り向かされた望美の顔が赤く染まっていて 思わず抱き寄せた。
「お前が・・・ここに残ってくれてオレがどれ程・・・」
言いかけて、少し距離をとる。望美の顔を覗きこんだ。
「望美にも何か言ってほしいんだけど?」
ヒノエに見つめられて、望美は口を開いた。 唇も口の中も乾いていて、思うように言葉を紡げない。 伝えたいことは頭の中であふれそうなのに。
望美は何かを言いかけては、目を伏せる。 それを何回も繰り返していた。ヒノエは辛抱強く待った。
「・・・顔、見られない・・・」
やっと聞こえた望美の声に、ヒノエは目を瞬いた。 望美は自分の手のひらで顔を覆って、 「ごめんね・・・」と呟いた。 ヒノエは抑えきれずに微かに声を上げて笑った。 望美の顔を覆う手を優しく外す。 望美の瞳の中に、自分が映るように覗きこんだ。
「オレだけの、姫君」


ヒノエくんは短い話でもエネルギーをめっちゃ消費しますね