<4.大好きだよ!
「のぞみちゃんは、ぼくのこと、すき?」
兄が近くにいなかった。だから訊けたんだと思う。 遠い昔のことのようだ。
「譲くん、譲くん、この蜂蜜プリン、すっごくおいしいね」
昔から笑顔は変わらない。きっと、先輩の自分への気持ちも 幼馴染のままなんだろう。
「先輩にそう言ってもらえてよかった。 また、作っておきますね」 「譲ー、おかわり」
兄がぐるりと振り返って、プリンの入れ物を突きつけてきた。
「・・・・ないよ。また作るって言ってるだろ、兄さん」
自由奔放な兄の背中を見てきたのに、自分はそうならなかった。 兄は思ったことを物怖じせずに口にできる。 それが羨ましかった。自分にはできない。 そうすることができたなら、幼馴染ではなく、違った見方を してもらえるだろうか。 思わず昔のことを思い出して肩を落とした。 自分も昔から根本的なところは変わらないのかも知れない。
「うんっ。大好きだよ!ゆずるくんもまさおみくんも だーいすき!」
お題ものは大抵短いんですけど、この話はさらに短くて
申し訳ないです。