「は〜っ。今日もいい天気だねぇ」
景時は太陽の光を一身に受けるように両手を広げた。
「ええ、そうですね」
と景時の横で答えたのは、庭先で花の手入れをしている譲だ。しゃがみこんで景時と同じように空を仰いで、眩しさに目を細める。
「きっと敦盛くんが生まれた日も、こんな気持ちのいい日だったんだろうね」
ね?と景時が後ろを振り返ると、偶然歩いていた敦盛がびくりと立ち止まった。
「敦盛?居るなら居るって言えよ。よく気がつきましたね、景時さん」 「いや〜、まぁね」 「譲殿、あまり兄上をおだてないで」
敦盛の後ろから朔が顔を覗かせた。朔の口調に景時が苦笑する。この二人はいつもこんな調子だが、その様子が微笑ましい。ふと敦盛の胸に去来ものは複雑すぎて、自身ですらよくわからない。
「ところで敦盛くん、今日は誕生日なんだってね。おめでとう〜。今日は一日、オレのことをお兄さんと思ってくれていいからね〜」
敦盛は景時の言葉を受け止めきれずに、静止した。その後、目を伏せた敦盛を見て朔の声が一段と高くなる。
「兄上!場所と空気を読んでください!敦盛殿にそんなこと・・・」
朔に言われて、景時も軽はずみだったかもしれないと思った。敦盛が目を伏せているのがわかって、焦った。
「・・・・・・あ、そうだよね。ごめんね、敦盛くん。オレなんかじゃ、君のお兄さんの代わりにはなれないもんね。軽率だったね。本当にごめんね」
景時は心底申し訳なさそうで、敦盛は苦笑した。
「いや、景時殿はお優しいな」
これは敦盛の心からの言葉。景時の言葉に、兄を思い出さなかったと言えば、嘘になるけれど。 譲も笑いながら、敦盛の言葉に賛同した。
「ええ、それに妹思いでもありますしね」 「やだな〜、二人とも。褒めすぎだよ〜」
照れる景時を見て朔は溜め息をつく。
「もう、おだてないでって言ったのに」 「朔殿。すまないが、今しばらく景時殿を」 「え、ええ。敦盛殿がよろしければ」
敦盛の言葉の先を悟り、朔が驚いたように頷いた。 朔に感謝の意を込めて軽く頭をさげた。それから、景時に向き直る。
「では、何か手伝うことはあるでしょうか、景時兄上」 「え?えっと、じゃあ〜・・・・・・・」
遠ざかっていく二人の背中を見送りながら、朔が小声で呟いた。
「・・・何だか兄上の方がまんざらでもないみたい」
確かに少し嬉しそうだった景時の表情を思い出して、譲は吹き出す。
「少し悔しいですか?朔」
覗き込もうとする譲から、朔はふいっと顔を背けた。
「・・・そんなこと、・・・ないわよ、譲殿」
顔を背けるのが何よりの証拠だと思ったが、へそを曲げられたら困ると思ったので、譲は必死で笑いたいのを堪えた。え〜これは敦盛さんおめでとう企画です。 これを書いてて、何で譲×朔はないのかな〜?と思いました。ええ、阿呆です。 20060614 ←戻る